税理士のためのClaude Code活用ガイド|freee・マネーフォワード連携で会計業務を効率化する
月末から月初にかけて、会計事務所には同じ作業がくりかえし戻ってきます。顧問先から届いた請求書や領収書を仕訳に起こし、できあがった仕訳をひと通り点検します。いつもと違う動きがあれば顧問先に確認のメールを書き、試算表ができたら面談用にコメントをまとめます。一つひとつは難しくありませんが、件数が積み上がると、半日がそこに消えていきます。
ChatGPTを使って一部を手伝わせている方も増えました。ただ、チャットに毎回コピーして貼り付け、出てきた答えをまた戻す、という往復が多くなりがちです。「その都度お願いする」止まりで、事務所のやり方が仕組みとして残っていきません。
Claude Code(クロードコード)は、その先に進むための道具です。チャットのように一問一答で終わるのではなく、自分のパソコンにあるファイルやクラウド会計のデータを直接読み込み、一連の作業をまとめて任せられます。会計ソフトを置き換えるものではありません。会計ソフトが扱わない「文章を書く」「一件ずつ確認する」「複数のツールをまたいで作業する」という、人の手が残っていた部分を引き受けます。
私はクロトレという、Claude Codeの業務活用を支援するサービスを運営しています。会計や税務の専門家ではありません。ただ、自社の月次決算はfreeeとClaude Codeをつないで自分で回しています。税理士ではない立場だからこそ、顧問先を奪う心配がなく、AIをどう業務に組み込むかだけに絞って、会計事務所の導入をお手伝いしています。この記事の土台は、私がfreeeとClaude Codeをつないで自社の月次決算を回している経験と、会計事務所のAI活用を支援してきた中で見えてきたものです。
この記事は、ChatGPTなどのチャット型AIは少し触っているけれど、Claude Codeはまだ使っていない、という会計事務所の方に向けています。まだ使い始めていない方は、先に Claude Codeデスクトップアプリのインストール方法 もどうぞ。
01 Claude Codeとは:チャット型AIとの違い
AIツールは、大きく2つのタイプに分けると整理がつきます。
ひとつは、ChatGPTやGeminiのようなチャット型です。質問を投げると答えが返ってくる、相談相手のようなAIです。便利ですが、実際の作業は人が手を動かします。AIが書いた文章をコピーして、会計ソフトやメールに自分で貼り直す。その往復は人の仕事のまま残ります。
もうひとつが、Claude Codeのようなエージェント型です。こちらは、人の代わりにパソコンを操作して作業を進めます。フォルダの中の請求書を読む、クラウド会計から仕訳を取ってくる、レポートのファイルを作る、という一連の流れをまとめて任せられます。相談相手ではなく、手を動かすスタッフに近づきます。
Claude Codeは、いまはパソコンにインストールするデスクトップアプリで使えます。黒い画面にコマンドを打ち込むような準備はいりません。アプリを開いて、日本語で指示するだけです。会計事務所の実務に、無理なく入っていけます。
02 freeeとマネーフォワードのつなぎ方(MCP)
Claude Codeが力を発揮するのは、事務所が毎日使っているツールとつながったときです。そのつなぎ役が、MCP(エム・シー・ピー)と呼ばれる仕組みです。
難しく考える必要はありません。いろいろな機器を1本の規格でつなぐUSBのように、AIと外部サービスをつなぐ共通の規格がMCPです。この共通規格を通して、Claude Codeはfreeeやマネーフォワードに直接つながり、仕訳を読んだり、試算表を取ってきたりできるようになります。チャット型では会計データを毎回コピーして貼り付けていましたが、つないでおけば、「先月の仕訳を見て」と言うだけでAIが自分でデータを取りに行きます。
freeeもマネーフォワードも、2026年に入って公式の連携窓口を用意しました。位置づけとしてはまだ新しい機能で、更新も続いています。ここでは2026年6月時点の流れを示しますが、設定するときは各社の公式案内で最新を確認してください。
freeeとつなぐ
freeeは、公式が画面つきの手順を出していて、デスクトップアプリから比較的かんたんにつなげます。
- Claude Codeのデスクトップアプリを開き、設定の「コネクタ」から「カスタムコネクタを追加」を選ぶ
- 名前に「freee」、つなぎ先のアドレスに
https://mcp.freee.co.jp/mcpを入力して追加する - 「連携する」を押すと、ブラウザでfreeeのログイン画面が開くので、ログインして連携を許可する
- ツールの一覧が表示されたら、使えるようになっています
ポイントが2つあります。ひとつは、AIが操作できる範囲が「ログインした人の権限と同じ」だということです。担当者ができないことは、AIにもできません。いきなり全権を渡してしまう心配がありません。もうひとつ、freeeは連携の効率を上げる補助ファイル(Skill)を公式に配布していて、これを入れておくよう案内しています。入れずに使うとAIが余計な動きをすることがあるので、手順から落とさないでください。手順の詳細は freee公式サポートの「freee-mcp(リモート版)を設定して利用する」にあります。
マネーフォワードとつなぐ
マネーフォワード クラウド会計も、2026年3月から全プランで連携を提供しています。デスクトップアプリにも対応しています。つなぎ方の考え方はfreeeと同じで、設定の「カスタムコネクタ」にアドレスを登録し、マネーフォワードIDでログインして連携を許可します。
ひとつ前段の準備があります。マネーフォワード側の管理画面で、対象の担当者に「アプリ連携」の権限を事前に有効にしておく必要があります。これは通常の管理者権限とは別のスイッチなので、見落とさないようにしてください。つなぎ先の正確なアドレスや対応の条件は、提供開始から日が浅く更新も続いています。設定のときは マネーフォワードの開発者向け案内 で最新の接続情報を確認してください。
つなぎ方の細部は違っても、いったんつながれば、Claude Codeに頼める仕事はどちらも同じです。ここからは、freeeでもマネーフォワードでも共通して使える活用シーンを5つ取り上げます。
03 活用シーン①:証憑から仕訳の下書きをつくる
顧問先から届く請求書や領収書を、一枚ずつ見ながら仕訳に起こします。件数が多いと、それだけで時間が消えていきます。
Claude Codeに証憑のファイルを渡すと、金額・取引先・税区分・勘定科目を読み取って、仕訳の案を一覧で出します。人がやるのは、その案に目を通して、合っていれば承認することです。ゼロから打ち込むのではなく、できあがった下書きを確認する作業に変わります。
このフォルダにある請求書のPDFを読んで、freeeに登録する仕訳の案を作ってください。 - 取引先・金額・税区分・勘定科目を一覧の表にする - 登録は私が一件ずつ確認してから行うので、まだ書き込まない - 読み取れない項目は空欄にして「要確認」と書く(埋めない)
ここで一点、外せない注意があります。消費税の課税区分や勘定科目は、AIが取り違えることがあります。とくに区分のある取引は、人の目で必ず確かめてください。AIが受け持つのは読み取りと下書きまでで、登録は人が確認してから行います。
04 活用シーン②:仕訳チェックと、顧問先への確認事項
月次の山場が、できあがった仕訳の点検です。いつもと違う動きはないか、計上が漏れていないか、税区分は適切か。経験のある人ほど、勘どころで見ていく作業です。ここはAIと相性のいい領域です。
「先月の仕訳を点検して」と頼むと、Claude Codeはクラウド会計から仕訳を取ってきて、気になる箇所を挙げます。前月と大きく違う金額、普段と異なる税区分、例年あるはずの費用が今月だけない、という「ひっかかり」を一覧にします。
いちばん効くのは、その次です。顧問先に確認したほうがよい点について、確認メールの文面案まで一緒に作れます。たとえば「役員報酬が今月だけ変わっているようですが、改定の理由をお教えいただけますか」という、そのまま送れる丁寧な下書きです。点検して終わりではなく、顧問先への確認の一歩手前まで進みます。
○○株式会社の先月分の仕訳を取得して、点検してください。 - 前月と金額が大きく変わっている科目 - 税区分がいつもと違うもの - 例年計上されている固定費で、今月見当たらないもの を挙げてください。 顧問先に確認したほうがよい点は、そのまま送れる確認メールの文面案も添えてください。 どれを送るかは私が選びます。
何を顧問先に送るかは、人が判断して選びます。AIは「気になる点」と「確認文の下書き」を出すところまで、と割り切ると、安心して使えます。
05 活用シーン③:月次レポートと試算表のコメント
巡回監査や月次面談の前に、試算表を見ながらコメントをまとめます。数字は出ているのに、それを顧問先にどう説明するかの言葉にする時間が、意外とかかります。
Claude Codeに試算表を渡すと、売上・利益・現預金の動き、気になる増減、前年同月との比較を、顧問先に説明する想定でコメントにします。たたき台ができていれば、人は数字の裏取りと、伝え方の調整に集中できます。
○○株式会社の今月の試算表をもとに、月次レポートのたたき台を作ってください。 - 売上・利益・現預金の今月の状況 - 前月や前年同月と比べて気になる増減 - 顧問先に一言で伝えるなら、というコメント をまとめてください。数字は私が確認します。
実務でおすすめなのは、いきなりレポートを完成させず、間に人のチェックを一段はさむやり方です。まずAIに「気になる論点」だけを挙げさせ、人がそれを見て取捨選択してから、レポートにまとめさせます。二段構えにすると、AIの早とちりがそのまま顧問先向けの文章になるのを防げます。
経営者が自分の会社の月次決算を自分で見る形については、Claude Code×freee連携で経営者が月次決算を回す に別でまとめています。あわせてどうぞ。
06 活用シーン④:決算・申告前の論点整理
決算や申告の前に、今期確認しておくことは何かを洗い出します。ベテランほど頭の中にチェックリストを持っていますが、それはその人の経験の中にあって、外には出ていません。
Claude Codeに今期の試算表と前年の申告内容を見比べさせると、例年と違う科目や、計上時期の確認が要りそうなものを、チェックリストの形で挙げます。経験者の最終確認を前提に、見落としを減らすための叩き台のリストとして使えます。税務の判断はAIに任せず、数字の異常を拾い出す役回りに絞って使います。
○○株式会社の今期の試算表と、昨年の申告内容を見比べてください。 決算前に確認しておくべき項目を、チェックリストにしてください。 - 例年と大きく違う動きのある科目 - 計上の時期を確認したほうがよさそうなもの - 例年と比べて動きが大きく、確認しておきたい科目 を挙げてください。税務上の判断は私が行うので、判断はせず、確認すべき候補を挙げるだけにしてください。
07 活用シーン⑤:面談の準備と、議事録・提案書
顧問先との面談は、前の準備と後の整理に意外と時間がかかります。前回何を話したかを思い出し、今回のアジェンダを組み、終わったら議事録を書いて、次回までの宿題を整理します。
ここもClaude Codeが効きます。面談前は、前回の議事録と最近の試算表を読ませて、今回話すべきアジェンダを組ませます。面談後は、録音の文字起こしを渡せば、議事録と「次回までのお互いの宿題(ネクストアクション)」の下書きを作ります。文字起こしが長いときは、要点を絞ってから渡すと精度が上がります。新しい顧問先への提案書も、面談メモから下書きを作れます。
【面談前】 次回面談する○○株式会社について、前回の議事録と最近の試算表を読んで、 今回の面談で話すべきアジェンダ案を作ってください。 【面談後】 この面談の文字起こしを渡します。 議事録と、次回までのお互いの宿題(ネクストアクション)を整理してください。
議事録も提案書も、AIが作るのは下書きまでです。顧問先に渡す前に、人が必ず目を通します。
08 事務所全体で仕組みにする:CLAUDE.md・Skill・MEMORY
ここまでは、一人の担当者が自分の作業を楽にする話でした。Claude Codeの価値は、その先で事務所全体の仕組みに変わるところにあります。
属人化は、多くの事務所の悩みです。ベテランのやり方はその人の頭の中にあって、引き継ぎには時間がかかり、担当者によって品質にばらつきが出ます。Claude Codeには、これを解くための3つの仕組みがあります。どれも、特別なファイルを1つ用意するだけのものです。
CLAUDE.mdは、事務所のルールブックです。AIに最初に読ませる説明書で、事務所の方針、文章の書き方、顧問先ごとの注意点を書いておきます。これがあると、誰が使っても同じ手順と観点で動きます。
Skillは、よくやる作業の手順書です。「月次レポートを作る」「確認メールを書く」という繰り返しの作業を、手順としてAIに覚えさせておきます。ベテランの段取りを形に残せるので、担当者によるばらつきを減らせます。暗黙知が抜けていく事務所ではなく、知識が資産としてたまる事務所に近づきます。
MEMORYは、顧問先ごとのカルテです。顧問先ごとの経緯や前回の論点、交わした約束を、メモのファイルに書きためておきます。次回からはAIがそれを読んで対応するので、担当者が代わっても、引き継ぎはそのメモを渡すだけで済みます。
この3つがそろうと、Claude Codeは単発で手伝うAIから、事務所のやり方を理解したスタッフに近づきます。個人の効率化から、事務所全体の仕組みへと広げていけます。
09 安全に使うために
顧問先の数字を預かる仕事だからこそ、AIに任せて大丈夫かという不安は当然です。よくある3つの心配に、先に答えておきます。大事なのは、危ないから使わないではなく、正しく理解して使うことです。
ひとつ目は、顧問先のデータをAIに渡してよいのか。クラウド会計を使っている時点で、顧問先のデータはすでにクラウドにあります。通信は暗号化され、アクセスは管理されています。AIも基本は同じ仕組みです。業務で使うなら、入力した内容をAIの学習に使わない設定にできるので、まずは法人向けのプランを選び、利用規約と設定で「学習に使わない」状態になっているかを確認してください。
ふたつ目は、AIが勝手におかしなことをしないか。Claude Codeは、下書きを作るところまでが仕事です。会計ソフトへの登録や、顧問先へのメール送信は、人が承認してから行います。さらに、AIにやらせない操作を、あらかじめ設定で絞れます。全部を任せきりにする道具ではありません。
みっつ目は、うっかり大事なファイルを消さないか。これも設定で防げます。Claude Codeには、実行の前に人へ確認を求める仕組みがあります。ファイルの削除のような操作は、AIが実行する前に確認するので、その場で止められます。気をつけようと心がけるのではなく、仕組みで止めるのが基本です。
安全は、法人プランで学習させない設定、できる操作を絞る、人が最後に承認する、の3つを重ねて作ります。どれか1つではなく、組み合わせて守ります。最初に整えておけば、あとは落ち着いて使えます。
まとめ:小さく1つ、始めるところから
会計事務所でClaude Codeが引き受けるのは、データの集計や文章の下書き、ツールをまたいだ事務の部分です。この記事で挙げたのは、次の5つでした。
- 証憑から仕訳の下書き
- 仕訳チェックと、顧問先への確認事項
- 月次レポートと試算表のコメント
- 決算・申告前の論点整理
- 面談の準備と、議事録・提案書
一方で、税務の判断、顧問先との関係づくり、最終的な責任は、人が握り続けます。AIは下書きを作り、人が確認して承認する。この線引きを保てば、品質の責任は事務所の手に残ります。
始め方は、欲張らないことです。いちばん時間がかかっていて、毎月くりかえす作業を1つだけ選んでください。多くの事務所では、仕訳チェックか月次レポートの下書きが入口になりやすいです。それをfreeeかマネーフォワードにつないで、1社・1か月分から試す。うまくいったら、隣の業務へ広げていきます。
AIが税理士の仕事を奪う、という話ではありません。早めに仕組みを整えた事務所が、その分の余力を顧問先への提案や相談に回せるようになる、という変化です。経営者・士業向けの進め方は 経営者のための Claude 活用 にもまとめています。最初の1つを、一緒に整理しましょう。