人材紹介会社がClaude Codeで求人票を作る|マスター1枚から媒体別に一括変換
私は人事として自社の求人を書いたことや、エージェントとしてクライアントの求人を扱ったこと、CFO仲介で求人要件を整理した経験もあります。求人票で実際に面倒だったのが、媒体ごとの書き分けです。同じ求人でも、詳しく載せる媒体もあれば、短くまとめる媒体もあります。媒体に合わせて書き直す手間は、案件が増えるほど大きくなります。
手で書けば時間がかかり、求人原稿の作成を外注すれば1件あたり数万円かかります。AIで求人票を作る事例は増えてきましたが、その多くは自社の採用担当が自社の1求人を作る話です。複数のクライアント×複数の媒体を回す人材紹介会社とは、必要な仕組みが違います。
この記事では、人材紹介会社が「1社のヒアリング → マスター求人票を1枚 → 媒体別に一括変換」という流れをClaude Codeで内製する方法をまとめます。人材紹介をハイテク事業に変える10の方法の求人票の工程を、運用に踏み込んで深掘りするものです。
求人票づくりの選択肢:手書き・外注・SaaS・内製
求人票の作り方には、いくつか選択肢があります。
| 作り方 | 手軽さ | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 手で書く | 低い(媒体ごとに書き直し) | 件数が少ないうち |
| 求人原稿の作成代行(外注) | 高い(丸投げ) | 件数が読めない・社内に書き手がいない |
| 求人票生成SaaS | 高い(自動生成) | 標準化された大量運用 |
| Claude Codeで内製 | 準備は要る(型を仕込む) | 複数クライアント×複数媒体を自社の型で回す |
外注やSaaSが悪いわけではありません。すぐ始めたいなら有力な選択肢です。Claude Codeが効くのは、クライアントも媒体も増えていく中で、自社の型を保ったまま内製で回したいときです。型を一度仕込めば、あとは同じ仕組みで回り続けます。
まず、1社のヒアリングからマスター求人票を1枚作る
最初に作るのは、媒体に依存しない求人票の原本です。これをマスター求人票と呼びます。原本が1枚あれば、修正も1か所で済み、媒体展開はそこから派生させられます。
進め方はこうです。
- クライアントごとにフォルダを用意し、会社情報・ヒアリングメモ・預かったJDを置く
- ヒアリングとJDから、「誰に届ける求人か」(求める人物像)を先に固める
- 人物像を踏まえて、業務内容・必須/歓迎要件・仕事の魅力をマスター求人票1枚にまとめる
ここでClaude Codeに任せるのは、クライアントフォルダの中身をまとめて読み込み、ばらばらの情報を1枚の原本に整える作業です。会社情報やヒアリングメモが各所に散らばっていても、そこから筋の通った原本を起こせます。
このクライアントの求人について、媒体に依存しないマスター求人票を1枚作ってください。 ■ 読み込む材料(このクライアントのフォルダ内) - 会社情報・事業内容のメモ - 求人ヒアリングのメモ/預かったJD - (あれば)過去に作った同社の求人票 ■ 作ってほしい構成 - 求める人物像(誰に届ける求人か。ヒアリングから言語化) - 業務内容(具体的なタスク) - 必須要件/歓迎要件 - 仕事の魅力(人物像の転職軸に響く点) - 雇用条件(雇用形態・勤務地・給与・勤務時間など、分かっている範囲で) ■ ルール - 材料に書かれていない条件は創作しない。不明な項目は「要確認」と明記する - 「即戦力」「優秀な方」などの抽象表現や、年齢・性別を匂わす表現は使わない
マスター1枚を、媒体別に一括変換する
求人票は、媒体によって求められるものが違います。同じマスターでも、どこを厚くするかが変わります。
| 観点 | Wantedly | Green | Indeed |
|---|---|---|---|
| 媒体の性格 | 共感・ストーリー型 | 条件×人物像の整理型 | 検索エンジン型 |
| 本文の作り | 「なにを/なぜ/どうやって/こんなことやります」の4部構成 | 必須要件・歓迎要件・人物像を具体的に整理 | 職種名と仕事内容を、検索される言葉で具体的に |
| 厚くする所 | WHY(理念・背景)と働く環境 | 求める人物像とスキルの解像度 | 職種名・キーワードと業務の具体 |
| トーン | 共感重視・ですます調 | 条件を整理して提示 | 簡潔・具体・検索性 |
この媒体ごとの差分を、媒体別の書き分けルールを書いておくファイル(例:formats.md)に一度定義しておきます。各媒体の構成・トーン・文字数に加えて、「マスターのどの情報を、どのセクションに対応させるか」のマッピングも書いておきます。あとは「Wantedly用に変換して」と指示すれば、マスターを読んで媒体の作法に整え直してくれます。媒体を追加したいときは、このファイルに定義を1つ足すだけです。
マスター求人票を、指定の媒体向けに変換してください。 ■ 入力 - マスター求人票:(このクライアントのマスター求人票ファイル) - 媒体の定義:formats.md(各媒体の構成・トーン・文字数・マッピングを定義したファイル) ■ お願い - 指定媒体(例:Wantedly)の構成・トーン・文字数に沿って書き直す - マスターのどの情報をどのセクションに置くかは、formats.md のマッピングに従う - Wantedlyなら共感とストーリー、Indeedなら職種名と検索キーワードを意識する、というように媒体の狙いに合わせる ■ ルール - マスターにない事実は足さない - 媒体ごとの禁止表現(年齢・性別の限定、誇大広告、根拠のない「アットホーム」など)は使わない
媒体に出す前に、明示項目の抜けをチェックする
求人票には、法律で明示が必要な項目があります。職業安定法では、募集の段階で業務内容・賃金・労働時間などの労働条件を明示する義務があります。さらに2024年4月から、明示すべき項目が追加されました。
媒体に出す前に、これらの抜けを機械的にチェックしておくと安全です。Claude Codeなら、チェック項目をファイルに持たせて、マスター求人票に各項目が埋まっているかを判定させられます。
確認したい主な項目です。
- 業務内容、契約期間、就業場所、始業・終業時刻、休憩・休日
- 賃金(額・計算方法・支払方法。固定残業代があれば時間数と金額)
- 社会保険・労働保険の加入状況、受動喫煙防止の措置
- 【2024年追加】従事すべき業務の変更の範囲
- 【2024年追加】就業場所の変更の範囲
- 【2024年追加】有期契約を更新する場合の基準(更新上限など)
このマスター求人票について、労働条件の明示項目に抜けがないかをチェックしてください。 ■ チェック項目(埋まっているか/不足かを判定) - 業務内容/契約期間/試用期間/就業場所 - 始業・終業時刻・休憩・休日/所定外労働の有無 - 賃金(額・計算方法・支払方法・固定残業代の時間数と金額) - 社会保険・労働保険の加入状況/受動喫煙防止の措置 - 従事すべき業務の変更の範囲(2024年4月〜) - 就業場所の変更の範囲(2024年4月〜) - 有期契約を更新する場合の基準(2024年4月〜) ■ 出力 - 項目ごとに「記載あり/不足(要確認)」を一覧で - 不足項目は、クライアントに確認すべき質問の形で書き出す
ひとつ注意があります。AIが法改正を正確に把握しているとは限りません。チェックはあくまで項目の抜けを機械的に拾うところまでです。記載内容が実態と合っているかは、人が最終確認する前提にしてください。
クライアントが増えても、定義とチェックは1本で回る
自社採用なら、扱う会社は1社です。人材紹介会社は、クライアントが増えるほど求人票も増えます。そこで、クライアントごとに増やすのは会社情報のフォルダだけにして、媒体の定義(formats.md)と明示項目のチェックは、全クライアント共通の資産として1本で持ちます。
こうしておくと、新しいクライアントが増えても、媒体への変換ルールと法令チェックは作り直さずに済みます。クライアントが10社になっても、媒体の定義は1本、チェックも1本のままです。回すほど、仕組みが効いてきます。
まとめ:原本を1枚に、媒体と法令は仕組みに
求人票の作り方は、手書きも外注もSaaSもあります。そのうえで、複数のクライアント×複数の媒体を自社の型で回したいなら、Claude Codeでの内製が選択肢になります。やることは3つです。
- 1社のヒアリングから、マスター求人票を1枚作る
- 媒体差分を定義して、マスターから媒体別に一括変換する
- 媒体に出す前に、明示項目の抜けをチェックする
媒体定義と法令チェックを共通の仕組みにしておけば、クライアントが増えても回り続けます。
人材紹介会社のClaude Code活用の全体像は 人材紹介をハイテク事業に変える10の方法、具体的な進め方は 人材紹介会社向けの Claude 活用 にまとめています。求人票づくりを、ヒアリングやスカウトと1本のワークフローにつなぐ方法は 人材紹介の採用業務をワークフロー化する方法 にまとめました。まずは1社分のマスター求人票を作るところから試してみてください。