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税理士はAIでなくなる?2026年に変わる業務と、生き残る条件

税理士・会計事務所の方とClaude Codeの活用について話していると、必ずと言っていいほど出てくる質問があります。「結局、税理士の仕事はAIでなくなるのでしょうか」というものです。

検索してみると不安をあおる材料には事欠きません。「税理士が代替される確率は92.5%」といった数字や、なくなる仕事の代表として税理士が挙げられた記事が並びます。毎日のように新しいAIのニュースが流れてくれば、この先どうなるのかと考えてしまうのも自然なことです。

先に私の見方をお伝えします。少なくともいまは、税理士の仕事がAIでなくなるフェーズではありません。むしろ、これまで手間のかかっていた作業が、AIで一気に楽になるフェーズです。ただし、この先ずっと同じ景色が続くわけでもありません。これから進むのは、AIを使う税理士と、使わない税理士に分かれていく二極化です。この記事では、その両方を順番に整理します。

私はクロトレという、Claude Codeの業務活用を支援するサービスを運営しています。会計や税務の専門家ではありません。ただ、自社の月次決算はfreeeとClaude Codeをつないで自分で回していますし、会計事務所のAI活用のお手伝いもしています。税理士ではない立場で、日々いろいろな事務所の方とAIの話をしているからこそ見えてきたものを、この記事にまとめます。

01 「税理士はAIでなくなる」と言われる理由

不安が一気に広がったのは、2022年末のことです。OpenAIがChatGPTを公開すると、世界中で「AIが仕事を奪う」という議論が始まりました。文章を書く、質問に答える、資料をまとめる。それまでは人間にしかできないと思われていた作業を、AIがこなすのを誰もが目にしたからです。

それから数年で、AnthropicのClaude、GoogleのGeminiと、次々と強力なAIが登場しました。そして2024年以降は「エージェント型AI」と呼ばれる段階に入ります。指示を受けるだけでなく、自分でツールを呼び出して作業を進めるAIです。Claude Codeのようなエージェント型AIは、コードを書くだけでなく、ファイルを読み、外部サービスとつながり、一連の業務を自律的に進められます。

OpenAI Anthropic Google 2022年 11月 OpenAI ChatGPT 公開 テキスト生成AIが一般普及。AI雇用不安の論争が始まる 2023年 GPT-4ClaudeBard が登場 推論精度が飛躍的に向上。主要3社が競合開始 2023年 Google Gemini 公開(Bard を刷新) 多言語・マルチモーダル対応。性能競争が本格化 2024年 GPT-4o / Claude 3 / Gemini 1.5 高速・低コスト化が進み、業務活用が現実的になる 2025年〜 エージェント型AIの時代(Claude Code など) AIが業務を自律実行できるように。2026年には 会計ソフトのMCP連携が開放。税務作業にも直結
生成AI主要3社の変遷(2022〜2026年)

会計・税務の業界にとって流れが変わったのは、freeeとマネーフォワードが動いたときです。両社は2026年3月に、外部のAIとつながるための窓口(MCP=Model Context Protocol)を公開しました。Claude Codeのようなエージェント型AIが、会計ソフトのデータを直接読み書きできるようになったことを意味します。記帳や仕訳といった税理士の日常業務が、AIと直結したのです。

こうした流れを受けて、「税理士はAIでなくなる」という話が再び注目されています。ネット上でよく引かれる「92.5%」という数字もその文脈で出てきます。ただ、この数字の出どころをたどると、元は2017年の新聞報道で、算定の根拠が示されていないとして士業の団体から異論が出たこともありました。一次資料となる研究論文に「税理士」という区分の確率が明示されているわけではありません。

数字の正確さはさておき、AIの急速な進化が税理士の仕事を変えることは確かです。ただ変わるのは、「税理士という資格や肩書き」ではなく、「記帳や仕訳チェック、定型レポートといった作業」のほうです。職業をひとかたまりで見るか、その中の作業を一つひとつ見るかで、話はまったく変わります。なくなるかどうかは、肩書きではなく作業の単位で考える必要があります。

02 結論:いまはAIで「楽になる」フェーズ

記帳、仕訳のチェック、顧問先への月次レポート、経営へのアドバイス。これまで手で入力したり、一つひとつ目で追って確認していた作業を、AIに一次下書きや一次チェックとして任せられるようになりました。ゼロから作る仕事が、できあがったものを確かめる仕事へと変わっていきます。なくなるどころか、いまは多くの作業の負担が軽くなる方向に動いています。

そのうえで、これからの数年で進むのは二極化だと考えています。AIを当たり前に使う税理士と、使わない税理士に、はっきり分かれていきます。急に仕事がなくなるわけではありません。ただ、3〜4年という単位で見ると、業界の景色はかなり変わっているはずです。

理由はシンプルです。AIを前提に動く事務所は、同じ時間でより多くの顧問先を見られて、提案や相談にも時間を割けます。顧問先からすれば、その差は見えます。レスポンスの速さや、相談に乗ってくれる余裕が変わるからです。結果として、AIを使いこなす税理士のところに仕事が集まっていきます。なくなるかどうかを心配するより、選ばれ続けるために動くほうが、これからは効いてきます。

03 AIに置き換わる業務と、人に残る業務

二極化の中身を、もう少し具体的に分けてみます。AIが得意な領域と、人が握り続ける領域は、きれいに分かれます。

AIが担えるところ(一次下書き・一次チェック)人が握り続けるところ(判断・関係・責任)
証憑からの記帳・仕訳の下書き税務上の判断、グレーな論点の最終決定
仕訳のチェック、いつもと違う動きの洗い出し顧問先への説明と、納得してもらうやりとり
月次レポート・試算表コメントの下書き経営者の相談に乗り、踏み込んだ提案をする
過去資料との突き合わせ、確認リストの作成申告内容への責任と署名

左側を見ると、共通しているのは手順が決まっていることです。インプットとアウトプットがはっきりしていて、やり方を言葉にできる作業ほど、AIに任せやすくなります。逆に右側に残るのは、判断と、人との関係と、責任です。顧問先の事情をふまえてどう処理するかを決める、説明して納得してもらう、最後に責任を負う。ここはAIが代わりに引き受けられません。

大事なのは、左側がAIに移ることを、仕事を奪われると捉えるか、判断と提案に時間を回せるようになると捉えるかです。同じ変化でも、立つ位置で意味が変わります。作業の比重が下がるぶん、これまで手が回らなかった右側に踏み込めるようになります。

04 2026年のAIで、税理士の仕事は実際どこまで変わるのか

2026年春、状況が大きく動きました。freeeとマネーフォワードが相次いで、AIとの公式の連携窓口を開いたことです。この窓口はMCP(エム・シー・ピー)という仕組みで用意されています。いろいろな機器を1本の規格でつなぐUSBのように、AIと外部サービスをつなぐ共通の規格だと考えてください。

これによって、Claudeのような実行型のAIが、会計ソフトのデータを直接読みに行けるようになりました。これまでは、会計ソフトの数字をコピーしてチャットに貼り、出てきた答えをまた戻す、という往復が必要でした。つないでおけば、「先月の仕訳を見て」と言うだけで、AIが自分でデータを取りに行きます。チャット型のAIを相談相手として使う段階から、実際に手を動かしてもらう段階へ進んだということです。

では、税理士の毎月の仕事は実際どう変わるのか。手のかかる代表的な4つで見ていきます。

記帳代行(データ入力)

いまは、顧問先から毎月届く領収書・請求書・通帳のコピーを、会計ソフトに1件ずつ手で入力します。顧問先が30社あれば、毎月の入力は数百件から数千件にのぼります。ここをAIに任せると、証憑を読み取って仕訳の下書きを一覧で出すところまで進みます。人はゼロから打ち込むのではなく、できあがった下書きに目を通して承認します。

仕訳チェック(入力内容の確認)

いまは、入力が正しいかを全件、目で追って確認します。交通費が会議費に紛れていないか、二重計上はないか、前月と比べて異常な数字はないか。AIは、この「ひっかかり」を先に拾い出します。普段と違う税区分、前月から大きく動いた科目、例年あるはずなのに今月だけない費用。人は、挙がってきた点を確かめます。

月次レポート作成

いまは、月に1回、顧問先に損益や資金繰りの報告書を作ります。会計ソフトからデータを引っ張り、Excelに貼り付け、グラフを作り、コメントを書く。1社で1〜2時間かかることも珍しくありません。AIは、データの集計から説明コメントの下書きまで進めます。人は、数字の裏取りと、顧問先にどう伝えるかの調整に時間を使えます。

顧問対応・提案

「節税できますか」「資金繰りは大丈夫か」といった相談に、データを調べながら答えます。ここは、必要なデータの集計や論点のたたき台まではAIが用意できます。ただ、最終的に何をどう勧めるかの判断は、人が握ります。顧問先の事情をふまえた提案は、置き換わりません。

BEFORE毎月、数百〜数千件の入力と全件チェック、レポート作成に追われる。
AFTER入力もチェックもレポートも下書きと一次チェックになり、人は判断と提案に時間を回せる。

実際の指示の出し方や、5つの具体的な活用シーンは 税理士のためのClaude Code活用ガイド にまとめています。まだClaude Codeを使い始めていない方は、先に Claude Codeデスクトップアプリのインストール方法 もどうぞ。

私が見ている範囲では、いまはまだ情報収集をしている人が多い段階です。一方で、実際に手を動かしている一部の人は、もうツールを入れて自分の業務で試し始めています。この差が、二極化の入口になっていると感じます。

05 これから選ばれる税理士がやっていること

不安を行動に変えている人には、共通点があります。

まず、情報収集だけで止まっていません。記事を読んだり動画を見たりするところで終わらず、実際にツールを入れて、自分の顧問先の業務で試しています。最初から全部を変えようとはせず、記帳や仕訳チェックなど、毎月くりかえす作業を1つ選んで任せてみる。そこで手応えをつかんで、隣の業務へ広げていきます。

次に、学んだことを外に出している人もいます。AIの活用法を自分で試して、Xなどで発信し、注目を集める税理士も出てきました。発信することで自分の理解も深まりますし、同じ関心を持つ人や顧問先候補とつながっていきます。

そして、空いた時間の使い道がうまい人ほど、専門特化や経営支援に振り向けています。作業に追われていた時間を、特定の業種に強くなることや、顧問先の経営相談に乗ることに回す。AIが作業を引き受けてくれるからこそ、人にしかできない領域に時間を使えるようになります。

学び方については、一人で進めるか、伴走してもらうかで悩む方も多いです。事務所の規模や進め方に合わせた選び方を 個別顧問か、研修か。事務所・企業の規模別に選ぶ に整理しています。

繰り返しになりますが、いま動けていない人も、すぐに何かを失うわけではありません。ただ、3〜4年たったときに、AIを使いこなす同業との差がついているかどうかは、いまの一歩で決まってきます。

06 顧問先(経営者)から見た、AI時代の税理士の価値

ここまでは税理士側から見てきました。発注する側、つまり顧問先の経営者から見ると、景色はまた少し違います。

最近は、税理士に依頼しなくても申告まで進められる、と打ち出すAIサービスも登場し始めています。まだ大きな潮流とまでは言えませんが、こうした選択肢は今後増えていくでしょう。経営者からすれば、定型的な記帳や申告だけが欲しいなら、わざわざ人に頼まなくてもよい時代が近づいています。

だからこそ、人の税理士に求められるものは、作業の代行から相談相手へと移っていきます。数字を見て先を読む、資金繰りの不安に応える、設備投資や採用の判断材料を一緒に整理する。経営者が本当に欲しいのは、こうした踏み込んだ伴走です。ここはAIサービスでは代えにくく、だからこそ人の税理士が選ばれ続けます。求められるものが作業から相談へ移れば、顧問料の中身も変わります。AIで記帳・仕訳が自動化されたときに顧問料と役割をどう見直すかは 税理士の顧問料はAI時代にどう変わるか にまとめました。

経営者が自分でも数字を見られるようになると、税理士との会話はむしろ深まります。経営者がClaude Codeとfreeeをつないで月次決算を自分で回す形は Claude Code×freee連携で経営者が月次決算を回す にまとめました。経営者側のAI活用に興味がある顧問先には、クロトレ for 経営者 も案内できます。顧問先が数字に強くなるほど、相談の質も上がっていきます。

まとめ:不安を、行動に変えるところから

「税理士はAIでなくなるのか」という問いに、いまの時点での答えを整理します。

すぐになくなるわけではありません。むしろいまは、AIで作業が楽になるフェーズです。代替されていくのは「税理士」という肩書きではなく、記帳や仕訳、定型的な申告といった、手順の決まった作業のほうです。その作業をAIに任せて、空いた時間を判断と提案に回せる税理士が、これから選ばれていきます。よく見る「92.5%でなくなる」という数字に立ちすくむより、いま自分の業務で1つ試してみるほうが、ずっと先につながります。

入口は小さくて構いません。毎月くりかえしていて、いちばん時間のかかる作業を1つ選んで、freeeかマネーフォワードにつないだAIに任せてみる。それだけで、変化の手触りはつかめます。

税理士・会計事務所向けの進め方は 税理士向けの Claude 活用 にまとめています。何から手をつけるか、一緒に整理しましょう。

FAQ

よくあるご質問

税理士の仕事はAIで本当になくなるのですか?

少なくともいまは、税理士の仕事がなくなるフェーズではありません。むしろ、記帳や仕訳チェック、月次レポートといった手間のかかる作業を、AIに下書きや一次チェックとして任せられるようになり、仕事が楽になるフェーズです。ただし、この先はAIを使う税理士と使わない税理士の差が広がっていきます。資格や肩書きがなくなるというより、作業を代行して稼ぐというモデルが変わっていくと考えるのが実態に近いです。

AIに置き換わるのはどんな税理士業務ですか?

手順の決まった定型作業から先に変わります。記帳、仕訳の入力とチェック、月次レポートや試算表コメントの下書き、過去資料との突き合わせなどです。これらはAIが一次下書きや一次チェックを担い、人は確認して承認する形に移ります。一方で、税務上の判断、顧問先との関係づくり、踏み込んだ経営の提案、申告への責任は人に残ります。

「税理士はAIに代替される確率92.5%」という数字は本当ですか?

この数字は一次資料では確認できません。広まったきっかけは2017年の新聞報道で、元になったとされる研究機関は職業ごとの細かい確率を公表していません。算定根拠が示されていないとして、士業の団体から異論が出たこともあります。裏取りできるのは、オックスフォード大学の2013年の試算で税務申告書の作成代行が99%、会計士・監査人が94%とされた、という事実までです。

AI時代に生き残る税理士になるには何をすればいいですか?

情報収集で止まらず、実際にツールを入れて自分の業務で試している人が、いま一歩先に進んでいます。記帳や仕訳チェックなど、毎月くりかえす作業を1つ選んでAIに任せてみるところからで十分です。空いた時間を顧問先への提案や相談に回せると、AIでは代えにくい価値が積み上がっていきます。

会計ソフトのAI機能と、Claude CodeのようなAIエージェントは何が違うのですか?

会計ソフトのAI機能は、そのソフトの中の決まった作業を賢くするものです。Claude Codeのようなエージェント型のAIは、会計ソフトのデータを読み、文章を書き、複数のツールをまたいで一連の作業を進められます。freeeやマネーフォワードがAIとの連携窓口(MCP)を開いたことで、両者をつないで使えるようになりました。

Writer

木村和弘(株式会社アルリーチ 代表)

木村和弘

株式会社アルリーチ 代表

Claude Code/Claude Cowork の活用研修「クロトレ」を運営。経営者・士業・人材紹介会社が、AIで業務を自分で内製・自走できるようにする個別顧問・研修を提供しています。CFO仲介事業の運営を通じて、財務・経営の実務にもAIエージェントを日常的に活用しています。

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