税理士のClaude Code、顧問と研修どっちで始める?4つの軸で見分ける
税理士の方から「Claude Codeを事務所に入れたい。ただ、外部の人に伴走してもらうべきか、研修で自分たちが学ぶべきか、どちらから始めればいいか分からない」という相談を受けることが増えました。
自分で調べても、すっきりした答えは出てきません。AI導入支援会社は「専門家に伴走してもらいましょう」と言い、研修会社は「自分たちで学んで自走しましょう」と言います。どちらも自社の立場からの結論で、自分の事務所にどちらが合うのかまでは見えてきません。
私はクロトレという、Claude Codeの業務活用を支援するサービスを運営しています。個別顧問と全体研修の両方を提供していて、税理士の方とも、経営者の方ともお会いします。自社の月次決算は、freeeとClaude Codeをつないで自分で回しています。両方の入口で人に教えてきて分かったのは、顧問と研修のどちらが正解かは、事務所によって変わるということです。
この記事では、個別顧問と全体研修それぞれが向く事務所、メリットと落とし穴、そして「あなたの事務所はどちらで始めるべきか」を見分ける軸を整理します。料金は事務所の状況によって変わるので、ここでは選び方の考え方を中心にお話しします。
01 税理士のClaude Code、最初の分かれ道
Claude Codeを入れると決めたあと、最初に迷うのが「誰が手を動かして覚えるか」です。会計事務所で現実的な始め方は、大きく2つに分かれます。
ひとつは個別顧問です。所長やキーマンのお一人が、講師と1対1で、自分の業務を題材に進めます。もうひとつは全体研修です。事務所の複数人がまとまって学び、社内に共通の土台をつくります。
どちらもゴールは同じで、事務所が自分たちでAIを使えるようになることです。違うのは入り方です。一人から小さく始めて広げるのか、最初から事務所全体で取り組むのか。
学び方には、ほかにも独学やスクール、勉強会といった選択肢があります。それらを横に並べた比較は Claude Codeの学び方を比較 にまとめました。この記事では、会計事務所が業務に組み込む現実的な入り口として、個別顧問と全体研修の2つに絞って見ていきます。
02 そもそもClaude Codeで税理士業務は何が変わるのか
どちらで始めるかの前に、Claude Codeで何ができるのかを押さえておきます。
ChatGPTのような会話型のAIを使う場合、資料を一つずつ貼り付けて、出てきた答えを自分で会計ソフトに戻す往復が残ります。Claude Codeはファイルやクラウド会計に直接つながるので、その往復がありません。請求書のフォルダを読んで仕訳の下書きを作る、freeeの数字から月次レポートのコメントをまとめる、といった作業を、事務所のデータのまま進められます。
会計事務所での代表的な使い方は、仕訳の下書き、仕訳のチェックと顧問先への確認文づくり、月次レポートの作成です。freeeやマネーフォワードとは、MCPという仕組みでつなぎます。さらに、事務所のやり方を書いたCLAUDE.mdや、業務ごとの手順を覚えさせるスキルを用意しておくと、誰が使っても同じ手順と観点で進められるようになります。
最初の一歩としては、仕訳の下書きから入る事務所が多い印象です。毎月くりかえす作業で、効果を実感しやすいからです。具体的な活用シーンと、そのまま使える指示文は 税理士のためのClaude Code活用ガイド に詳しくまとめています。まだ使い始めていない方は、先に Claude Codeデスクトップアプリのインストール方法 に目を通しておくとスムーズです。
03 選択肢A:個別顧問で始める
個別顧問は、講師と1対1で進める形です。一般的なサンプルではなく、自分が毎日やっている業務をそのまま題材にするので、学んだことをそのまま実務に活かせます。
向いているのは、まず所長やキーマンのお一人から試したい事務所です。事務所全体で足並みをそろえる前に、一人が先に手を動かして成果を確かめたい、というケースに合います。
個別顧問の良さは、自分のリズムで進められることです。複数人で学ぶと、どうしても進み方に差が出て、ついていけない人が脱落しがちです。1対1ならその人の理解度に合わせて進められるので置いていかれませんし、ITの得意・不得意に合わせて内容も調整できます。やりたいことに直結した使い方から覚えられるのは、一人だからこそです。
私が個別顧問でお会いするのは、税理士の方、経営者の方、人材紹介や採用に関わる方が中心です。伸びる方には、共通点があります。アドバイスを素直に受け取り、自己流に走らず、まず言われた通りに手を動かせる方です。そういう方ほど、上達が早いです。
気をつけたいのは、伴走を「やってもらう」だけで終わらせないことです。伴走してもらっている間は業務が回っても、自分で手を動かしていなければ、力は事務所に残りません。この点は後でもう一度触れます。
04 選択肢B:全体研修で始める
全体研修は、複数人がまとまって学ぶ形です。同じ内容を全員が学ぶので、社内に共通の言葉ができ、特定の人だけが使える状態を防げます。
向いているのは、事務所としてAI導入を本格的に決めている場合です。所長お一人の関心ではなく、事務所の方針としてやると腹を決めているなら、最初から全員で取り組む意味があります。職員の側に「AIを使ってみたい」という気持ちがあり、すでにChatGPTなどを触っていてAIの便利さを実感している事務所だと、立ち上がりが早いです。
全体研修には、もうひとつ効果があります。研修を通して、AI活用を引っ張る推進役を見極められます。同じ内容を教えても、面白がってどんどん使う人と、そうでない人は必ず出てきます。これは適性や習熟度の差で、自然なことです。その中で前のめりになる人が、事務所の旗振り役の候補になります。
研修で内製できるようになると、顧問先のデータを外部に預ける範囲が小さくなる利点もあります。
なお、会社として職員に研修を受けさせる場合は、要件を満たせば国の助成金の対象になることがあります。制度の区分や審査によって変わり、支給が保証されるものではありませんが、検討する価値はあります。詳しくは 法人向けClaude Code研修の助成金は最大75% にまとめました。
05 あなたの事務所はどっち?4軸で見分ける
ここまでをふまえて、自分の事務所に合うほうを絞り込みます。次の4つの軸で見ると、向き不向きが見えてきます。
| 見極める軸 | 個別顧問が向く | 全体研修が向く |
|---|---|---|
| 進め方 | まず所長・キーマン一人で試したい | 事務所として導入を決めている |
| 人数・規模 | 一人から小さく始めたい | 複数人をまとめて底上げしたい |
| 学ぶペース | 自分のリズムで、脱落せず進めたい | 全員で足並みをそろえて高め合いたい |
| ITの慣れ | 得意・不得意に合わせて調整したい | すでにChatGPTなどを使い慣れている |
費用と広がり方の違いも、選ぶときの材料になります。具体的な金額は事務所の状況で変わるので、ここでは性質だけ並べます。
| 見るところ | 個別顧問 | 全体研修 |
|---|---|---|
| 費用のかかり方 | お一人分・月ごとの契約 | 人数分・期間で区切る |
| 広がる範囲 | まず一人、そこから横へ | 最初から複数人へ |
| 助成金 | 対象外 | 要件を満たせば対象 |
どちらか一方に決めきれないこともあります。その場合は、所長やキーマンが個別顧問で先に試し、成果が見えてから全体研修で事務所に広げる、という二段構えがよく合います。一人で型を作っておくと、全体研修のときに社内で教える側に回れます。プランごとの詳しい内容は 税理士・会計事務所のためのClaude Code活用 にまとめています。
06 どちらで始めても、定着を分けるのは「推進役」と「最初の成功体験」
顧問でも研修でも、終わったあとに使われ続けるかどうかは、別のところで決まります。外部に頼んでも定着しない事務所には、共通する原因があります。
ひとつは、社内に推進役を置いていないことです。AI活用を引っ張るキーマンがいないと、研修や顧問が終わった瞬間に動きが止まります。逆に、旗振り役が自分から面白がっていると、その熱が周りに伝わって、事務所の中で自然と広がっていきます。
もうひとつは、成功体験がないまま終わってしまうことです。小さくてもいいので、自分の手で一つ業務が楽になった、という実感を作れた事務所は、その後の定着が早いです。最初から大きな自動化を狙わず、いつもの業務の半分をAIに任せてみる、といった小さな一歩から積み重ねるのが現実的です。
だからこそ、伴走を「丸投げ」にしないことが大事です。やってもらうのを眺めているだけでは、力は事務所に残りません。顧問でも研修でも、形に関係なく、自分で手を動かして成功体験を作り続けることが、定着につながります。
07 どちらを選んでも外せない、顧問先データの守秘
顧問先の数字を預かる仕事なので、データの扱いに不安を感じるのは当然です。相談の場でよく出る心配に、順番に答えておきます。
ひとつめは、AIに学習されないかという心配です。入力した内容を学習に使わせない設定(オプトアウト)を使えば、データが学習に使われることはありません。業務で使うなら、まず法人向けのプランを選び、この設定になっているかを確認してください。
ふたつめは、海外のサービスを使うことへの不安です。これは、普段お使いの会計ソフトやクラウドサービスと同じ基準で考えると整理できます。すでにクラウド会計に顧問先のデータを預けているのなら、AIだけを特別に恐れる理由はありません。同じ目線で運用ルールを決めれば十分です。
ただ、「これさえやれば完璧」という魔法はありません。ほかのシステムと同じように、運用のルールを決めておくことが守りになります。具体的には、AIに渡す権限を必要な分だけにする最小権限、入ってくる情報を無条件には信用しないゼロトラスト、守りを何重にも重ねる多層防御の3つです。
そして、仕訳の登録や顧問先への送信は、最後に人が確認してから行います。AIが受け持つのは下書きまでです。適切な運用ルールさえ持っていれば、大きな事故は防げますし、万が一のときも被害を小さく抑えられます。セキュリティの考え方は 税理士・会計事務所のためのClaude Code活用 でもう少し詳しく説明しています。
08 まとめ:迷うなら、一人で小さく試すところから
税理士のClaude Code導入は、個別顧問と全体研修のどちらが正解と決まっているわけではありません。一人でまず試したいなら個別顧問、事務所として広げると決めているなら全体研修、という形で、事務所の状況に合うほうを選ぶのが基本です。
そして、どちらを選んでも、定着を分けるのは社内の推進役と最初の成功体験です。外部に丸投げするのではなく、自分で手を動かす前提で進めてください。
もし迷うなら、所長やキーマンが一人で小さく試し、成功体験を作ってから事務所へ広げる進め方が無理ありません。学び方全般を比べたいときは Claude Codeの学び方を比較 を、具体的な業務での使い方は 税理士のためのClaude Code活用ガイド をどうぞ。
AIが税理士の仕事を奪うのではありません。早めに小さく始めた事務所が、その分の余力を顧問先への提案や相談に回せるようになります。どちらで始めるか迷っているなら、税理士・会計事務所のためのClaude Code活用 から、30分の無料相談で一緒に整理しましょう。