Claude Code×freee連携で経営者が月次決算を回す|試算表チェックから変動科目の洗い出しまで
経営者にとって、会社の数字を毎月締めて確認しておくことは欠かせません。年に一度の決算とは別に、その月の損益や財産の状況を締めて見ておくことを、月次決算と呼びます。売上はどうだったか、固定費は膨らんでいないか、先月や前年と比べて大きく動いた科目はないか。経営の判断には、ここを押さえておきたいところです。
ただ、これを毎月きちんとやるのは手間がかかります。税理士に確認したり、freeeの画面をいくつも開いて数字を拾ったり、先月と並べて比べたりと、同じ作業を毎月繰り返すことになります。そこから先の見通しを試算しようとすれば、さらに手間が増えます。
この毎月の確認を、もっと楽に、見やすくできないかと思い、Claude CodeをfreeeのMCPでつないで試してみました。freeeに登録されている試算表を、自分の見たい形で呼び出します。損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)の要点、その月の売上や固定費がどのくらいかといったところを、ひとことで呼び出すだけで一覧できます。毎月めくって探していた頃より、かなり楽になりました。
もちろん、全部を任せられるわけではありません。できることと、まだできないことは、はっきり分かれます。この記事では、freeeとClaude Codeをつないで、経営者が自分で月次決算を回す形を、非エンジニア向けにまとめます。コードを書かずに、Claudeと会話するだけで、毎月の数字を整理できます。
01 なぜ「月次決算」は経営者がAIに任せやすいのか
月次決算は、AIと相性のいい作業です。理由は3つあります。毎月やること、手順がほぼ決まっていること、そして扱うのが文章ではなく数字だということです。新しい売り文句を考えるような作業ではなく、すでにfreeeに入っている確定したデータを取り出して、見て、比べる作業が中心になります。
経営者が月次で知りたいことも、だいたい決まっています。先月の売上と利益はどうだったか。前の月と比べて、大きく動いた費用はないか。資金繰りで気をつける点はないか。どれも、データを集計して比較すれば見えてきます。AIは、この集計と比較を速くこなします。
ひとつ前提があります。freeeのようなクラウド会計に、数字が正しく入っていることです。AIは、入っていないデータを作り出すことはできません。日々の取引がfreeeに整理されて入っているからこそ、その上でAIが集計や洗い出しを手伝えます。まず土台のデータをそろえることから始まります。
02 用意するもの:freeeとClaude、freee MCPのつなぎ方
必要なものは3つです。freeeのアカウント、Claudeの有料プラン(Pro以上)、そしてfreeeとClaudeをつなぐfreee MCPです。
MCPは、AIがfreeeのような外部のサービスを操作するためのつなぎ役です。freeeは会計と人事労務の領域で、2026年6月時点で343本のAPIを公開しています(freeeが2026年6月に開いたセミナーでの説明によります)。このAPIを通して、AIが試算表や仕訳を読み取れるようになります。
「APIをつなぐ」と聞くと身構えるかもしれませんが、コードを書く必要はありません。ブラウザ上で連携を許可するリモート接続の形もあり、非エンジニアでも進められます。Claude Codeのほか、より業務寄りのClaude Coworkからも使えます。両者の詳しい違いは Claude Code と Cowork の使い分け にまとめました。どちらで始めるか迷うなら、次のように考えると選びやすくなります。
| 観点 | Claude Code | Claude Cowork |
|---|---|---|
| 向いている人 | 実装や自動化まで踏み込みたい | コードを書かず業務を任せたい |
| 月次決算での入口 | freee MCPをつないで指示する | 同じくつないで、より会話に近い形で使う |
| 最初の一歩 | 慣れている人はこちらでも | 非エンジニアはこちらから入りやすい |
最初の接続が終わったら、あとは日本語で話しかけます。つないだ直後に試すなら、こんな一声から始めます。
先月の試算表(月次推移)を見せてください。 前月と比べて、金額が大きく動いている科目があれば、上位から教えてください。
この段階で、AIにどこまで触らせるかも決めておきます。まずは読み取りだけを許可して、数字を見せてもらうところから始めると安全です。書き込みまで許す設定は、慣れて、必要が出てきてからで間に合います。
03 月初に「先月の月次を締めて」と頼むと何が起きるか
実際の流れを見ていきます。月初に、先月分の月次をまとめてほしいと頼むと、AIはおおまかに次の順で動きます。
まず、freeeから先月の試算表を取り出します。次に、前の月と比べて金額が大きく動いた科目を洗い出します。たとえば「前月比で20万円以上動いた科目を出して」と基準を伝えると、その条件で並べてくれます(この洗い出しの例は、先ほどのfreeeのセミナーでも紹介されていました)。最後に、動いた科目と、考えられる理由の見当を、短いリストにまとめます。
先月の月次をまとめてください。 - freeeから先月の試算表(月次推移)を取得する - 前月と比べて20万円以上動いた科目を、増減の大きい順に並べる - それぞれ、考えられる理由の見当を一行で添える(確定でなくてよい) - 最後に、私が確認すべき科目を3つにしぼって教える
ここで大事なのは、AIが出した洗い出しを、そのまま結論にしないことです。「会議費が増えています」と出てきても、それが問題なのか、想定の範囲かを決めるのは経営者です。AIは、見るべき場所に先に当たりをつけてくれます。最後に数字を見て判断する工程は、自分の手元に残します。
毎月この形で回すなら、結果をSlackに流す手もあります。月初に通知が届けば、確認の入り口になります。
04 AIに任せること、freeeの純正機能に任せること
全部をAIにやらせる必要はありません。freeeがもともと得意なことは、freeeに任せたほうが速くて確実です。
| 作業 | 任せる先 |
|---|---|
| 経費精算・レシートの読み取り | freeeの純正機能 |
| 取引先・金額で決まる仕訳 | freeeの自動仕訳ルール |
| 銀行明細との消し込み | freeeの「自動で経理」 |
| 複数科目の横断集計 | Claude Code |
| 前月比・予実の変化の要約 | Claude Code |
| 気になる点の洗い出し・通知 | Claude Code |
経費精算や、取引先と金額で決まる仕訳、銀行明細との消し込みのように、形が決まっている処理は、freeeの自動仕訳ルールや「自動で経理」に任せるのが堅実です。ルールがはっきりしているほど、純正機能が安定して動きます。
AIが力を出すのは、その上の柔軟な作業です。複数の科目を横断して集計する、前月比や予実の変化を言葉でまとめる、気になる点を一覧にして通知する、といった作業になります。決まった型のない、その時々の集計や要約は、AIのほうが小回りがききます。
線引きの目安は、処理の形が決まっているかどうかです。決まっているならfreee、決まっていない集計や要約ならAI、と分けて考えると迷いません。
05 ここはまだできない:正直な線引き
便利な一方で、今はまだできないこともあります。ここを正直に押さえておくと、過剰な期待で振り回されずに済みます。
たとえば、レシートを読み取った文字(OCRの結果)や、アップロードしたPDFそのものは、APIからは取り出せません。「領収書の画像を渡せば、全部やってくれる」という形は、今の時点では現実的ではありません。紙やPDFが起点の作業は、freeeの読み取り機能を先に通す必要があります。
ブラウザを操作して画面から取る方法もありますが、速度が落ちたり、セキュリティの面で気をつける点が増えたりします。慎重に判断する場面です。freeeはAPIの拡充を検討しているとのことなので、できる範囲は今後広がる可能性があります。
月次決算でAIに任せられるのは、freeeに入っている数字を集計し、変化を洗い出すところまでです。紙やPDFを読み取る入り口や、最終的な判断は、人の側に残ります。できる範囲を見極めて使えば、無理なく回せます。
06 私の月次決算の回し方
私自身も、経営者として毎月の数字を自分で見ています。確認するのは、多くの会社と同じで月末から月初のタイミングです。ただ、今はこの確認をワークフローに組んでいるので、「今月の数字はどうだった?」「先月の試算表を見せて」と聞くだけで、freeeから数字を持ってきてくれます。毎回こちらから細かい手順を指示しなくても、必要な数字が手元に出てきます。
やっていることは、freeeと連携して、見たい情報をこちらに持ってきて、自分が見たい形に並べ替えて確認する、というやり方です。どの数字を見たいか、どこが気になるかを決めるのは人間で、その判断は自分の側に残しています。数字を運んでくるところと並べ替えるところをAIに任せ、見るべき場所を選ぶのは自分でやる、という役割分担です。
いちばん助かっているのは、売上や利益、かかっている固定費といった数字を、税理士に聞いたり、freeeを直接開いて探したりしなくても、すぐに見られるようになったことです。以前より格段に見やすくなりました。
今はここまでですが、事業がもっと複雑になってきたら、先のシミュレーションに使ったり、数字の見せ方を変えたりしていくことになりそうです。月次の数字を自分の手元で見られる状態をつくっておくと、その次の打ち手にも広げやすくなります。
07 まとめ:毎月の数字を、自分の手元で見られるようにする
月次決算は、毎月・定型・数字が主役という点で、AIと相性のいい作業です。freeeとClaude Codeをつなげば、試算表を取り出し、前月から大きく動いた科目を洗い出すところまでを、自分の手元で軽くできます。
一方で、全部を任せるものではありません。形の決まった処理はfreeeに任せ、紙やPDFの読み取りや最終判断は人が握ります。その線引きをしたうえで、集計と洗い出しをAIに手伝ってもらう距離感が、現実的です。
自分でどこまで回すか、どこから人に任せるかは、会社の状況によります。経営者向けの進め方は 経営者のための Claude 活用 にまとめています。月次の数字を自分の手元で見られるようにする最初の一歩を、一緒に整理します。